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木崎さんは誰にでも同じテンションで接する人。
相手が偉いからといって下手に出ないしご機嫌うかがいもしない。
信用できる、そういう所が。
「お疲れ様です」
エレベーターを待っていたストールに首を埋めた先輩は身体ごと俺に向けた。
「お疲れ」
そして、弟の就職祝いについて質問された。
弟、いたんだ。
その日は風が強くてビルの外に出ると、身体に抵抗を感じる程だった。
別方向に進もうとしている先輩も、巻き上がる突風に目を瞑っていた。
「先輩」
呼びとめて
「安心して食べられる所行きます?」
と、聞けば先輩は黙って頷いた。
還暦を過ぎた店主がカウンター内で作る様子がよく見える清潔感のあるお店。
「こんな所教えて良かったの?」
先輩が窺う様にこちらを見た。
確かに、教えたく無かったですよ。
まぁ、でも先輩ならいいかなんて思ってしまったんです。
隣の先輩は出て来る料理全てに満足そうな顔をする。
「先輩二人兄弟ですか?」
「ううん、三人。もう一人下に弟がいるの」
「一人娘だから父親は心配ですね」
「……どうだろう」
目を伏せると長い睫毛が際立つ。
「あまり話さないですか?」
「……私が10歳の時に事故で死んじゃった」
「…………」
黙ってしまった俺を労うみたいな顔して「なんかごめん」と、先輩は謝った。
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