第3話

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先輩に裏の顔が無いものだろうか……と、試したくなったのかもしれない。 「引きます?」 「いや、私には関係ないから」 そう、この感じ。 何を言っても受け止めてくれる感じ。 いや、自分に興味がないからこそそうなのだろう。 「やっぱりいいですね」 その言葉に先輩は 「?」 無表情で首を傾げた。 本当、先輩は何に対しても誰に対しても動じない。 それは自分の素を見せないから。 自分の身は自分で守る。 心の扉は決して開かない。 そうして自分を保っているのだろう。 だから、そんな心の扉の重い先輩が表情を少し出すだけでほんの少し浮遊感を感じる。 それは多分警戒心の強い野良猫が自分だけに近寄ってくるような…………些細な些細な優越感。
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