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「先輩」
くるっと振り向く時に揺れる髪の動き
キーボードに触れる指
薄紅色の爪
目尻が長い睫毛
少し厚めの下唇
射抜かれるような茶色い瞳
持ってるものは……良いのに。
「ん?」
「これ、提出に必要な資料です」
「あ、ありがとう」
「……どうしたんですか?それ」
指先の絆創膏を指して問う。
「昨日ピーラーで指まで切った」
受け取った見積りを確認しながら答える。
「自炊できるんですか?」
「……するよ。1人暮らしですから」
心外、とでも言うような顔をされた。
「家族のご飯ずっと先輩が作ってたんですか?」
「…………」
何、その沈黙。
「ちゃんと料理するようになったのは……ちょっと前」
「……へぇ」
その答えに男の影を感じたのは、ただの勘だ。
そしてそれを追求したい欲求が湧く。
「彼氏の為、とか?」
「……まぁ、ね」
ふぅん。
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