第3話

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「先輩」 くるっと振り向く時に揺れる髪の動き キーボードに触れる指 薄紅色の爪 目尻が長い睫毛 少し厚めの下唇 射抜かれるような茶色い瞳 持ってるものは……良いのに。 「ん?」 「これ、提出に必要な資料です」 「あ、ありがとう」 「……どうしたんですか?それ」 指先の絆創膏を指して問う。 「昨日ピーラーで指まで切った」 受け取った見積りを確認しながら答える。 「自炊できるんですか?」 「……するよ。1人暮らしですから」 心外、とでも言うような顔をされた。 「家族のご飯ずっと先輩が作ってたんですか?」 「…………」 何、その沈黙。 「ちゃんと料理するようになったのは……ちょっと前」 「……へぇ」 その答えに男の影を感じたのは、ただの勘だ。 そしてそれを追求したい欲求が湧く。 「彼氏の為、とか?」 「……まぁ、ね」 ふぅん。
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