第3話

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今迄で1番冷たい声が出たと自覚できる程小川の返答に呆れてしまった。 「意味わからないんだけど」 突き出しのそら豆に手を伸ばした。 「例えばさ、チョコレートって皆好きじゃん。 あれってカカオの実から想像出来ない美味しさでしょ? 人が食べてるの見て、食べて見たら美味しかったっていう事でしょ?」 「…………言ってる事はわかったけど例えに分かりづらい例えで返すなよ。凄い遠回り感がある」 「えー?そうかな」 「客先と話す時気を付けろよ?」 「……」 思い当たる節があったのか小川は黙ってしまった。 まぁ、人柄でカバーできるからマイナスポイントではないだろう。 「お疲れ」 仕事を終えた先輩がやってきた。 「お疲れ様です」 「先輩奥行きますか?」 「いい、ちょっと詰めて。小川、荷物置いてもらっていい?」 「はい」 いつものように自分の隣に座る先輩に小川が鞄を受け取りながら問い掛けた。 「木崎さん、何でいつもそっちに座るんすか?」 「……だって、小川の隣にいたらリアクション毎にぶつかりそうだから」 先輩は当たり前でしょ?みたいなテンションでそう言って、おしぼりを受取りビールを頼んだ。 「確かに」 そう呟いて妙に納得している小川と先輩のやりとりを嶋野さんがいたら笑っていただろう。
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