第3話

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「まだやってんの?」 初見さんは机に片手をついて、体重を掛けながら首を傾けた。 「あ、はい。あと少し」 「木崎帰った?」 「ええ」 「羽山、終わったら付き合う?」 「……」 それは疑問系だけど、Yesとしか答えるなって事ですか? 「じゃあ、終わったら俺んとこ寄って。車で送ってくから」 「……はい」 じゃあ、で纏めた。 優雅に歩いて出て行くその背中に小さく溜息を吐き出した。 「初見さん……できたら社内で不用意に話し掛けないで下さい」 「えー?」 エレベーターで地下へと向かう。 「貴方目立つんですから」 「それはそっちも一緒でしょ?」 「自分は一社員ですけど貴方は次期社長候補ですから全然違うでしょ?」 「はは、言うねぇ」 初見さんは痛くも痒くもない顔して上を見上げた。 「どぉ?」 「何がですか?」 地下駐車場に着き初見さんが歩き出した先の方で黒い車のヘッドライトとアローミラーがチカチカ光った。 「営業部はお前の役に立つ?」 「それ、普通逆じゃないですか」 「あ、そっか」 初見さんに促され、革張りのシートの助手席に乗り込んだ。 滑らかに動き出した車の中はとても静かだった。 「営業部に来てから羨ましいと思うようになりました」
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