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初見さんは左に曲がりながら尚も話し続けた。
「木崎って変わってるよね。
俺らの入社式の後、グループワークがあったんだけど
まぁ、俺の場合周りがだいぶ引いちゃってさ。
その時同じグループだった木崎が『初見』って呼んだんだよね。
しょっぱなから呼び捨てで」
「……」
「あ、こいつとはちゃんと話せそうだと思ってね」
「嘘とかお世辞言いませんもんね」
「ねー」
多少のナビをしてマンション前に着いた。
「勉強会、参加しても良いですか?」
「良いよ、歓迎する」
「以外でした。そんな事してるなんて」
「俺の為だよ?」
初見さんがふっと笑った。
「……」
「仕事に対する姿勢とかやり方とか俺への接し方とか、今から知っておくと後々役立つでしょ?
あと各部の情報収集の為」
「…………」
「三段も四段も飛ばして上に行く為には、土台が必要だから」
「……」
「ちゃんと自分の立場を利用しないとね。
あ、出るとき後ろ気を付けて」
車がきていない事を確認してドアをあけた。
歩道に上がり振り向くと、余裕そうに笑って初見さんは去って行った。
少しずつ仕事をまかせて貰える様になってきた、初夏を迎えたある夜。
仕事終わりにネクタイを緩めて視線を彷徨わせていたら、交差点の反対側に先輩を見つけた。
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