第3話

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初見さんは左に曲がりながら尚も話し続けた。 「木崎って変わってるよね。 俺らの入社式の後、グループワークがあったんだけど まぁ、俺の場合周りがだいぶ引いちゃってさ。 その時同じグループだった木崎が『初見』って呼んだんだよね。 しょっぱなから呼び捨てで」 「……」 「あ、こいつとはちゃんと話せそうだと思ってね」 「嘘とかお世辞言いませんもんね」 「ねー」 多少のナビをしてマンション前に着いた。 「勉強会、参加しても良いですか?」 「良いよ、歓迎する」 「以外でした。そんな事してるなんて」 「俺の為だよ?」 初見さんがふっと笑った。 「……」 「仕事に対する姿勢とかやり方とか俺への接し方とか、今から知っておくと後々役立つでしょ? あと各部の情報収集の為」 「…………」 「三段も四段も飛ばして上に行く為には、土台が必要だから」 「……」 「ちゃんと自分の立場を利用しないとね。 あ、出るとき後ろ気を付けて」 車がきていない事を確認してドアをあけた。 歩道に上がり振り向くと、余裕そうに笑って初見さんは去って行った。 少しずつ仕事をまかせて貰える様になってきた、初夏を迎えたある夜。 仕事終わりにネクタイを緩めて視線を彷徨わせていたら、交差点の反対側に先輩を見つけた。
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