第3話

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俺の意思に関係なく、世の中は回っている。 頑張ったところで何も変わらない。 ただサボれば評価は地に落ちる。 なんて報われない人生だろう。 ふぅ 吐き出した紫煙は散り散りに姿を消していく。 「煙草なんて吸うの?」 ベランダに出て来た女が髪をかきあげながら言う。 「ん、たまにね」 「何その煙草、外国の?」 「まぁね」 「ねぇ」 手すりにかけていた腕に絡んで来た。 「……名前、教えてよ」 ふぅ と、吐き出し灰皿に煙草を押し付けた。 「必要無いよ」 「え?」 「だって。もう会わないし」 口角だけ上げて見せると、瞳孔を開くみたいに見開いて腕に絡んでいた手の力が抜けた。 するりとすり抜けベランダから部屋に入りそのまま出口へ向かう。 「ちょ……ちょっと」 呼びかける声に振り向いた。 「朝ご飯は好きに頼んで」 ルームサービスのメニューを指す。 「え?……なに?」 「こっちが何?って感じだよ。 昨日会ったばっかでやっちゃって、また会う必要ある?」 「は?」 「俺ね、一度やった女とは二度と会わないの」 そう言えば何も言えなくなる事を知っている。 「…………」 「じゃぁね」 パタンと扉が閉まっても追いかけてはこない。
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