第3話

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「木崎ちゃんまた眉毛ないの?」 月曜の朝、小池さんが木崎さんに誰もが指摘したいと思っている事を言ってくれた。 「……駄目ですか?」 そう平然と答える先輩の返事に思わず仕事の手が止まる。 「いくら客先行かないって言っても……どう思う?羽山君」 先輩を越えて小池さんが自分に話を振って来た。 くるっと椅子を回してこちらを見る先輩の顔は素顔だった。 「……まぁ、そうですね。 逆に何もしないで外に出れるなんて凄いと思います。年齢的に」 「あ、今のセクハラで勝てますかね私」 先輩がくるっと背中を向けて小池さんに問いかけた。 その話を聞いていた嶋野さんがくくっと笑った。 「いやぁ、面白いよね」 そう呟きながら会議の資料を纏めだした。 月に一度営業部全体会議がある。 数字の達成率とかどう取り組んでいるとか連絡事項とか。 「コストオンだと収支悪いよね」 会議終了後ぽつりと、先輩が零す。 「それは仕方ないです。でも回収はきっちりしてます」 「……まぁ、そうね」 「別の営業部行ってみたいですか?」 「ううん。うちの部は接待無いでしょ?客先的に。 営業活動少ないから私はここがいい」 「確かに、先輩には向いてますね」 「ここしか向いてないとも言えるけど」 「それ、あえて言わなかったのに」 先輩は始めの頃と比べ割りと話すようになった。
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