第3話

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入札物件が受注出来た。 協力してくれた設計部の部長にお礼を言いに行く先輩に一緒に来てと言われついて行く。 高萩部長は会長の孫で若くして部長になった人。 会議室から出てきた人を先輩が呼び止めた。 振り向いたその人は人当たりの良さそうな笑顔で応えた。 若くして部長になれたのが分かる。 同族経営だからといって誰でも役職に着けるわけでは無い事を皆知っている。 多少の妬みを持つ者はいるだろうが高萩部長はそんな事気にも止めない大きさがある。 先輩と高萩部長の会話を割って入るように「匠にぃ」と呼び掛ける声が後ろから聞こえた。 やってきた人は先輩の同期で 「あ、羽山、これ一応社長の息子の初見」 先輩が思っても無い言葉で紹介をしてくれた。 「一応って酷いよね?将来社長になるかもよ、俺」 「ないない。高萩部長を差し置いて初見が社長になったら私辞める」 「酷くね?羽山もそう思わない?」 「……そうですね」 そう答えるしか無い。 先輩の携帯に電話がかかって来たようで、端の方に移動して話し始めた。 そして、先輩がこちらに背を向けているのを確認して 「よぅ、久しぶり」 初見さんが目を細めてこちらを見る。
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