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「はぁ」
私は一体何をやっているんだろう。
千佳子はインスタントスープを啜りながら、2回目の深いため息を吐いた。
先程の場面を思い返す。エレベーターホールで居たたまれなくなった千佳子は、丁度良いタイミングで現れた梨花に全てを任せた。言い換えれば、逃走したのである。
「梨花、こちら、今日から私の部署にいらっしゃった永塚さん。これから食堂に行こうと思ってるんだけど、私の代わりに案内をお願いしてもいいかな。私、15時までに終わらせないといけない仕事があって」
「私は全然構わないけど…」
梨花の返事に千佳子の焦りがすっと引いていく。
「永塚さん、こちら私の同期の仙堂さん」
「永塚です。よろしくお願いします」
「こちらこそ」
和やかに挨拶を交わす二人の様子を見た千佳子は安堵した。梨花ならば、社交的なことはもちろんイケメンに目がないため、丁寧な対応をしてくれるに違いない。
「じゃあ、私はここで」
「千佳子、仕事頑張ってね」
梨花の表情も明るくなっていたので、お互いにとっても良かったのだ。そう自分に言い聞かせながらも、デスクに戻りながら、心のどこかがすっきりしていなかったことに気がつく。
私は一体何をやっているんだろう。
少しぬるくなったスープが、いつもより不味く感じた。
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