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たかが幹事、されど歓迎会の幹事である。千佳子は、今週に入って何度目かわからない溜息をついた。社食のサラダバーはいつもより社員で賑わっており、列の進みが遅い。気がつけば、レタスを大量によそってしまっていた。
「千佳子、最近元気ないわねぇ」
尋常ではない量のレタスをボウルに盛り付けている千佳子に、梨花も心配しているようだった。
「まぁね」
「何かあったの」
「業務を溜めちゃってるところに、歓迎会の幹事任されちゃって…」
「それはご愁傷様ね」
梨花は酸っぱい梅干を食べた時のような表情をした。若手社員である千佳子も梨花も、飲み会や歓迎会、送別会といったイベントでは必ず幹事を任されていた。幹事が恐ろしく面倒臭い役割であることは身を持って知っている。
「でも、見方を変えればさ」
「永塚くんと急接近できるチャンスじゃない」
梨花は、我ながら良いことを言ったとでもいうように、目を輝かせて千佳子を見つめ返した。
「だから、私は別に…」
言い返しかけて、千佳子は口に出しかけた言葉をぐっと飲み込んだ。自分自身の気持ちが未だによくわかっていなかった。
そもそも、こんなにも業務に集中できていない要因は一体何なのだろう。
盛りすぎたレタスの1枚がはらりとトレーに落ちていく。千佳子はその様子はじっと見つめた。
幼馴染の登場に胸が騒いでいるせいなのか、幼馴染の整った顔に胸がときめいてしまっているせいなのか、度々見てしまう昔の夢に困惑しているからなのか。
その全てかもしれない。
千佳子がそのことに気がついた時、この数日間もやもやと胸の辺りにあった霧のようなものが、さっと晴れていった。
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