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月曜日の午前中は時間が過ぎるのがとても早い。溜まりに溜まったメールを裁くだけで、あっという間にお昼の時間がやってくる。
ぐるぐると鳴り始めた胃に、何を与えてあげようか考えていると、
どすん、という衝撃音と共に千佳子のデスクが僅かに揺れた。
何事かと周囲を見渡すと、部長が大きな段ボールを斜め前のデスクに置くところだった。
千佳子の視線を感じたのか、部長が顔を上げ、互いの視線がぶつかった。
「新しく来るキャリアの人の荷物だよ」
衝撃音と、部長の表情から、段ボールの重さ加減を何となく察した。
「部長に荷物を運ばせるなんて、すごいキャリアの方ですね」
千佳子は、目の前のパソコンに視線を半分向けたまま、部長を労う気持ちを込めて言った。
「本当は今日来るはずだったんだけど、前職の関係で来れなくなってしまったらしい」
「それで荷物だけ来てしまったんですね」
「そうなんだよ。なんでも、前職の引き継ぎの挨拶でニューヨークで出張に行ったら、大雪で飛行機が飛ばなくて、帰って来れなくなってみたいでね」
「そういえば、何十年かぶりの大雪ってニュースでやってましたね」
次から次へとポップアップで表れるメールの受信表示に、顔をしかめながら千佳子は部長と会話を続けた。
右手の小指がフル活躍し、出社してからエンターキーを何回押したかわからない。
だが、段ボールを置き終えて、
千佳子のデスクの隣にある自身のデスクに戻ってきた部長の言葉に、千佳子の指の動きが止まった。
「そうそう、新しく来る人なんだけど、下の名前が『ケイ』なんだ。最近の若者は名前までかっこいいんだなぁ」
そのひどく懐かしい音の響きに、千佳子の心臓がどきりとする。そして、今朝みた夢のことを思い出していた。
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