第2話 再会はさんかく。

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日比谷家の朝食に欠かせないのが、お手製野菜スムージーだ。小松菜、林檎、バナナにヨーグルト、豆乳、ハチミツを加え、ミキサーにかけて完全である。 そのお手製スムージーを、千佳子は朝から盛大に口から吹きこぼした。 「いま、何て言ったの?」 千佳子は、顎にかかったスムージーを手で拭いながら、オープンキッチンに立ち、食器を片付けている母親に尋ねた。 「だから、圭くんがね、転職したんだって。昨日、久しぶりに圭くんのママと電話したのよ」 千佳子の母親は、スムージーを吹きこぼした娘に、怪訝そうな顔をする。 「…圭くんって、あの圭くん?」 自分の部屋にある箪笥の上の写真立てが頭に浮かぶ。そこに飾られているのは、ハロウィンで白雪姫に扮した千佳子の隣に、カウボーイに扮した少年が写っている写真だ。 「他にどの圭くんがいるのよ」 あまりにもタイミングがタイミングだったため、千佳子の思考回路は朝から完全に一時停止した。後15分で家を出なければ間に合わないが、まだ目玉焼きとパンが半分程残っている。 「だって久しぶりじゃない。お母さんが、永塚さんと話すなんて」 「まぁ、それはそうだけど。2、3年に1回くらいは連絡とってるわよ」 千佳子は、目玉焼きとパンを大急ぎで食道に流し込み、お皿をキッチンのカウンターへ運ぶ。母親の話により、前日からの胸騒ぎがますます強くなった。 「そんなドラマみたいな偶然あるわけないよ」 自分に言い聞かせるように呟きながら、千佳子はリビングを後にした。
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