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松山さんは弁当をひったくる様に受け取ると、出入口の方へと駆けだし、ドアノブに手を掛ける。
しかし、その状態で松山さんは暫し静止した。
「お、おい。どうした?」
「……ざいます」
「え?」
返答は無く、そのまま屋上を出て行った。
「なんだったんだ?」
「いやー、あんなキャラだったっけ?」
秋彦は笑みを浮かべて言った。
「知らねーよ。でも、確かにとっつきにくい…」
「てか、優姫。昼飯どーすんの?」
あっ……。
俺は午後授業の時間を全て空腹との戦闘に費やすこととなった。
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屋上を飛び出た少女は風呂敷片手に階段を降りていた。
埃っぽく薄暗い階段を降りるうちに、少し昂ぶっていた気持ちも落ち着き始めた。
(あぁ、屋上だからつい気が抜けてムキになっちゃった。お弁当ももらってきちゃうし…)
明るい廊下に出る前に立ち止まる。
片手で自分の頬を叩く。
自らを戒める為に。
「私はもう…………信じない」
少女の呟きは誰にも届くこと無く昼休みの喧騒の中に消えていった。
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