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色っぽい意味は微塵もないが、他人である気はしていない。
ただ、親さえ知らない痛みをこの女と共有したことがある。
その過去は変わるようなものじゃない。
ああ、名前が付けられないな──と思った瞬間、俺はそれについて考えるのを放棄した。
少し特別な昔の恋人、そんな感じでいいんじゃないだろうか。
それなら、少しは優しく接することができるような気がした。
それでなくても、梓には借りがあるし。
10秒くらいかけて深い溜め息をついてやってから、疲れを隠さない笑みを向ける。
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