107人が本棚に入れています
本棚に追加
「まあ、ありがとう。悪いな、言うのが遅くなって」
「いいのよ。お節介だったんだろうから。お礼なんてなくても、放置されてても。あなたが幸せなら、ぜぇんぜぇん」
にっこり笑った梓の顔に底知れない冷たさを感じて、背中がゾクッとした。
あのあとのことを報告しなかったこと、しっかり根に持っている。
「……悪かった」
「何、あなた梓ちゃんに何かしたの」
「いえ、何でもないんですよ。司郎さん、今の奥様と少しこじれてしまっていて……その間に、立たせてもらいました」
「司郎! あなた、あれだけ尽くしてくれてた梓ちゃんに、なんてこと!」
母ちゃんの顔が真っ赤になったので、俺はそのまま差し出された箱を受け取ってさっさと逃げ帰った。
.
最初のコメントを投稿しよう!