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「祐介、菜緒ちゃんまたこっちに戻ってくるらしいわよ。」
この話の始まりは、大学3年の春休み中の晴れたある日。
俺、小笠原祐介はバイトもなく、朝から部屋でゴロゴロとしていた。
昼少し前、トイレに行きたくなり階段を降りていった時、母親が俺を呼び止めた。
「えっ、菜緒が?何で今更?」
鼓動が早くなるのが分かる…
松井菜緒は俺の幼なじみ。そして…
菜緒は生まれた時から同じ住宅団地に住んで居た。
しかし、高校生になると同時に菜緒の父親が転勤になってしまった為、名古屋に引っ越していった。
一昨年、菜緒の父親の転勤が終わった。
菜緒の両親と弟は東京に戻って来たが、菜緒は名古屋の短大に合格した為、名古屋で一人暮らしをしていたのだった。
「菜緒ちゃん短大を卒業して、名古屋で働いてたんだけど、これからは東京で働くんだって。」
「へぇ~」
ん?・・・って事は……
また同じ団地に住むのか…
ドキドキがもっと早くなる。
「さっき菜緒ちゃんに会ったんだけどねぇ、だいぶ変わっちゃったわよぉ。」
母さんが悲しそうに言う。
「何?ギャルになってた?」
母さんは髪クルクルの女や短すぎるスカートを履いている女が大嫌いなのだ。
「その逆!!」
「逆ってどゆこと?オタクになったって事?」
菜緒は元々明るくて笑顔がカワイイ、男子からよくモテていた子だ。
「アンタも会って来てみなさいよ。いや、会わない方が祐介の為か…?」
「何が言いたいんだよ!?」
「いやぁ…ねぇー。でもどうせいつかは会うんだから挨拶してきなさい。ついでに今引っ越しの荷物運び手伝ってきたら?」
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