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遠恋になってから、俺と菜緒はヒマな時メールして、夜10時頃から電話をするのが日課だった。
その日もフツーにメールをしていた。
そしていつものように俺が電話をしようとした時、菜緒から着信が来た。
この時間の電話は俺から掛けるのがフツーだったからちょっと驚いた。
「祐介、ごめん、…別れて。」
俺が『もしもし』と言うヒマも無い位すぐに菜緒が言った。
「えっ?」
「ごめんね、じゃあね。」
そう言って菜緒は電話を切った。
俺には全く意味がわからなかった。
それから毎日、電話やメールをしたが全く返って来なかった。
そして数週間後、菜緒はケータイを替えたのだろう。
音信不通になり、俺の初恋は終わった。
唯一の交際手段、ケータイが使えなくなったら終わる恋。
なんて脆く不確かな恋愛。
『お客様のお掛けになった電話番号は現在使われておりません。』
機械の声は何て冷たいのだろう。
なんだか急に虚しくなった。
そしてこの時、『これで終わりだ。』
ってひしひしと感じた。
でも、忘れる事なんてできなかった。
この団地で唯一の同い年だったからか、菜緒とはずっと一緒に居た。
菜緒の事は、小さい頃から好きだったけど、その時の好きは家族愛のようなものだった。
しかし、『好き』はどんどん形を変えていった
。
そして、気付いたら『恋』になっていた。
それは菜緒にとっても同じだった。・・・はずだ。
それなのに、訳も分からずフラレた。
名古屋で他に好きな奴が出来たのかな?
それが一番有力だったがそんな事考えたくなかった。
菜緒と別れてから、高校3年間、彼女を作る気にならなかった。
菜緒の存在を忘れられなかった。
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