第2話 未知の土地

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(テレビで取り上げられるのはまずい! なんとしても、何としても帰らないと……これ以上有名になってたまるか!!) 学生手帳などをポケットにいれ立ち上がる。まずは人里を探しだそう。ここにずっと一人でいても人は通る気配はないし、下手をすれば魔物などに襲われるかもしれない。新たな目標を胸に、岩田は一歩踏み出した……そう、踏み出したのだが 「人里どこだよ!? もう夜だぞ!?」 掠れた声でいら立ちを吹き飛ばすように叫ぶが、長い時間水を飲んでいなかったためむせてしまう。目が覚めたとき、太陽は高く昇っていたのにもかかわらず、今は沈み大きな蒼い月が岩田を照らしている。月光の光で、辺りに草草は蒼に輝き、粒子粒のようなものがあたりに浮遊している。精霊かなにかの類なのか、自分にはよくわからない。元気な時ならば、とても綺麗で興奮しているだろう。だが今は、何時間もあるいていたため、体力的にも限界が来ている。足ががくがくと笑い、立っているのが精一杯の上、追い打ちをかけるような腹の根が音を鳴らす。 「くそ、腹減った疲れた! 何処か休める場所……休める……やすめ……」 こんな何もない所で倒れたりでもしたら何が起きるかわからない。足を何度もたたき、必死に奮い立たせるが意識はもうろうとし、青い光や草、木々たちが二重に見えてくる。もうだめだ、ここで地面に寝よう。一歩足を踏み出し、倒れるように寝転がったが、何時までたっても草のにおいや地面の冷たい感触が来ない。それどころか飛行機が離陸するときの浮遊感が岩田を襲う (やべぇ……これ……俺、落ちて……?) だが、それを確認することはできず、落ちている最中に岩田は一瞬だけ、風に乗り儚く切ない歌声が聞こえたような気がしたが、その声を、人物を確かめることはできず、そのまま意識を飛ばしてしまった。 * * * * 「何?」 岩田から遠く離れたところ、腰かけにちょうどいい大きさの石の上に少女は腰かけていた。首だけを動かし、辺りを見渡すが人の気配はない。白の長袖の洋服だが、肩からは黒になっている。右肩には腰までの薄い青の小さなショールをかけていた。 (気のせい?) 風になびく髪を押さえながら少女は前に向き直す。心地よい風に身を任せ、一度中断した歌を歌いだすと、草草がその少女の歌に反応するかのように、よりいっそう強く輝きだした
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