第2話 未知の土地

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(あの人たちは今、何をしているのでしょうか……私と同じ景色を見ていますか?) 空に向けて手を伸ばす。一際輝くあの『青い月』 向かって手を伸ばす少女の横顔は、とても寂しく、そして悲しいものだった。歌い終えた少女の腕は力なく膝の上へと落ち、同時に頭を垂れた。 静寂が訪れ、少女の発する呼吸だけが聞こえる。どれくらいの時間がたっただろうか? 少女は頭をあげ、石の上から降りるとオレンジ色のズボンの汚れを落とし月に背を向け歩き出す。まだ何処か浮かない表情をし、地面を見ながら歩いていると月光と粒子たちの光で、何かが落ちているのを見つけた 「これはたしか学生手帳? 館の誰かの落し物でしょうか?」 持ち主には悪いと思ったが、少女は学生手帳の中を恐る恐る開いた ―------- お祭りのような、人々の活気のあふれ声がする。意識が徐々に覚醒すると同時に、訪れる腰の痛み。痛さにこらえながら、薄らと目を開けると現代日本ではまずありえないような格好をしている人たちがいた。体を動かすと、今度は体中に痛みを感じた。そして自分の置かれている状況を理解する。どうやら、自分はあの場所から落ちた後、今自分が乗っているもの、つまり藁が 大量に積まれている荷台に運よく落ち、ここまで連れてこられたのだと。神父の格好をした、頭が光っている叔父さんに、修道女の格好をしている女性。そして、恐らくこの荷台の持ち主であろう農家のおやじが自分を目の前に何かを話し合っていた 「は、はろー?」 掠れた声で声を発せば、神父たちは驚き、何か恐ろしいものを見たかのように一歩後退る。修道女は祈りをささげはじめ、神父は自分に十字架を向ける。農家の親父も真っ黒な顔をまっさおにして修道女と同じように手を合わせている 「なぁ、ちょっと……」 苦痛の表情を浮かべながら手を伸ばすと、神父たちはよりいっそう脅えたような表情を浮かべ、自分に背を向けると一目散に教会の中へと入っていった。残された岩田はただ口をぽかんと開け、その後ろ姿を黙って見つめることしかできない
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