第2話 未知の土地

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「……もしかして言葉通じてない?」 これは一大事だ。言葉がもし通じないという事は、お金もおそらく同じではないだろう。ということは、これからは食事も水も、全く買えず、ゴミをあさるという生活になってしまう。そこまで裕福な暮らしとはいいがたいが、普通な家庭で育った岩田にとって今置かれている状況は絶望的だった (残飯食って……道端で寝る生活とか絶対やりたくねぇ!!) 何とか立ち上がり、ふらつく体で岩田は教会の柵門を開け、重く痛い体を引きずるように道に出る。洋風な街並みで、活気じみた声。安いや、いいものが入っているなどとの声が聞こえる。どうやら言葉は通じているようで、一つの不安が解消しホッと息をついた。だが目の前を通った男の姿もだが、腰にかけていたものを見、目を見開く。腰にはアニメでしか見たことのないレイピアがそこにはあり、町をよくよく見渡せば歩いている人々の約5割が武器を持っていた。 (うっわ、まじかよ……武器売っているし……今更だけどここ、本当に異世界なんだな) 視線を南に向ければ真っ白で大きな城が目に入る。ああ、本当にここは異世界なんだ。そう痛感していると、甘い、いいにおいが鼻についた。そのにおいにつられるように岩田はフラフラと歩き出す。その際、街の人々が岩田をまるで汚らしいゴミなどを見るような目で蔑んでいたが、今の彼にとってそんなことは気にならなかった。 「!! パン屋!!」 臭いにつられてたどり着いたのはパン屋だった。出来立てのふっくらと柔らかそうなパンたちが店の前にも並び、その店長と思わしき男が客と共に世間話をしている。 あのパンを食べたい。 二日も食べていない岩田の胃袋は限界だった。パンを見るだけで、ごくりと喉が鳴る。世間話をしていて、店長は岩田の存在に全く気付いていない。今なら、今なら盗めるかもしれない……邪な考えが脳裏を駆け巡る。食べたい、パンを、なんでもいいから食べたい。岩田はできるだけ気付かれないよぅ、ゆっくりと、パン屋に近づく。あとちょっとでパンが手に入ると思ったときだった
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