第2話 未知の土地

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「おい、貴様! 止まれ!!」 ひやりと冷たいものが首筋に当てられ、思わず岩田は両手をあげる。まさか、もうばれたのだろうか。手をあげたままゆっくりと振り返ると、重たい鎧をきている装兵が二人に、騎士が一人自分に剣を向けていた。 「貴様、今パンを盗もうとしていたな!?」 「ご、誤解だ! 盗んでない! いや、おいしそうだなとは思ったけれど、盗んではいない!!」 うっかり本音が出そうになったが、そこは隠し必死に否定するが兵士たちと疑いは晴れない。そこでようやく岩田は街の人々が自分に向けている視線に気づき、自分の格好を見る。顔は泥だらけで、枝で切ったのか、すり切れている。服も泥だらけのしわしわで、お気に入りだった制服も穴が開いている個所が多かった (どうみても貧困者です、本当にありがとうございました……) 「それともお前、奴隷か? どこの貴族の奴隷だ?」 「奴隷じゃない!……です。いや、本当まじで」 普段通りに話せば、武器が向けられ思わず敬語になってしまう。ひやりと冷たい刃が首からほほに上がり、そのほほを軽くつつかれる。赤い血がほほを伝ったが、不思議と痛いという感覚はなかった。それは体中がすでに痛いからというのもあるだろう。ただでさえ疲労が抜けていないのに焦っていると腕を引かれ、乱暴に路面に向かって叩きつけられる。起き上がろうとした岩田を二人の重装兵に押さえつけられ手首を騎士へ向かって差し出される 「泥棒には泥棒なりの処置を取る! その両腕、切り落としてくれる!!」 「待ってください、隊長! 此奴の腕輪、はずれません!」 「腕輪を……? ほう、しゃれたものをしているな。が、罪人は罪人。外れないなら、斬る幅を広げて落とすまで!!」 騎士が剣を振り下ろすために、大きく上へ振り上げる。盗んでもいないのに、何もしていないのに、このような形で手首を切り落とされるなんて。 そんなの、絶対認めたくない。岩田の瞳が強く輝いた時―突然、岩田の腕ではなく、剣を振りかぶった騎士の腕が凍り始めた
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