第2話 未知の土地

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「な、なんだこれは………氷の魔法!? 一体どこからだ!? まさか貴様が私に……!?」 「――っ、乱暴やめてください、その人は私の連れです!! 」 少女の焦る声に、騎士と、そして岩田は声のする方へと顔を向ける。急いで走ってきたのか、膝に手を当てて、肩で息をする赤い髪の少女。頬を赤く染め、汗をぬぐう少女はやがて大きく深呼吸すると顔を上げ自分を見つめた 「この人は、私たちの仲間です。手荒な真似はなさらないでください!! これ以上彼に暴力を振るえば全力でお相手します。」 「來……様!? ということはまさか貴様は……この氷の魔法は……!!」 威嚇だろうか、自分を押さえつけている兵の足もとに銀色の鷲の矢が突き刺さる。その意味を察した兵は岩田の上から退き、腕を凍らせた騎士をつれ逃げるように去っていく。 騎士が去ったことで、少々和らいだ空気になったが、何人かは自分と目の前でパンを買っている來に視線を向けていた。なぜこの少女は自分を助けてくれたのだろう。 自分は彼女と面識はないはずで、助けてもらえるようなこともしていないはずだ。記憶をさかのぼり、來という少女の事を考えていると、紙袋を片手に來が戻ってくる。自分に視線を合わせるため膝をつくと、紙袋を差しだした 「……くれるのか? 俺、金とか……持ってないぞ?」 「はい。お金はいりません。それに、食べられないっていうのは……とても辛いという事を私は知っていますから。遠慮なく食べてください」 少し表情を暗くした來に、岩田は気づくこともなく、痛む体に鞭を打ち、彼女の手からパンが入った紙袋をとり、來に背を向けると必死になってパンを食べ始めた。二日ぶりに食べるパンはとてもおいしく、思わず涙が出そうになる。必死に食べる姿に來は優しい笑みを浮かべショールから徳利を取り出すと、岩田の横に置く
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