第2話 未知の土地

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「岩田さん、お水もありますからね。のどに詰まらせないように気を付けてください。……お体は大丈夫ですか?」 「………ん」 「それでなんですけど、食べながら出いいので聞いてもらえるでしょうか? 手当ても兼ねて私の事をお話ししたいので」 頷いた岩田に、來は杖を取り出し、回復魔法をかけながら事情を説明し始めた。帰路の途中、自分の学生手帳を拾ったという。まさかここから落ちたのではないのかと思った來は学生手帳を片手に、夜中にもかかわらず、仲間を呼び自分を探しに来たというのだ。 「俺、学生手帳落としたんだ……ってあれ? あんた、文字が読めるのか?」   メロンパンを食べ終え、そこでようやく岩田は來のほうへと振り返ったが…… ドクン、胸が激しく鼓動した。 そして一瞬、心臓が止まった気がした。上手く呼吸ができず、のど元に手を当てる。体も熱くなり、ギシギシと軋みだし気持ちが悪い。今まで食べたパンを戻しそうになるのを何とか耐える。 (力が入らない……音が聞こえない……体が……体が熱い……! 痛い……重い……!) 來の声も、街の人々の声も聞こえなくなり、ついに岩田は音を立てて倒れてしまう。そこでようやく來は岩田の異変に気付き、必死に自分に呼びかける。急激に体調が悪くなった岩田はもしかすると、と來の手元にある杖を見る。魔法を放っているのか、白い光を発しているそれに、もしかしたらこれが原因かもしれないと岩田は口を開く。 震えながら杖と、口を動かせば來は慌てて杖をしまう。どうやら声は出るようで少し安心した。だが、気持ちの悪さは健在で一向に良くなる気配はない。よくなりたい一心で來に向かって手を伸ばせば、両手で手を握られ必死に自分に向かって何かを叫んでいる (食あたりとか……? 魔法を受け付けないとか? なにそれ……使えない……) 意識が遠のく際、來が自分の手を握りながら後方に向かって叫んでいたが、それを確認できることはなく、岩田は意識を手放した
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