141人が本棚に入れています
本棚に追加
「痛っ……なに……」
あまりの乱暴さに反論しようと男の顔を見たが、冷たい表情で岩田は押し黙った。彼は腕輪と岩田の表情を見ると彼の腕から手を放した
「……嘘は言っていない。本当らしい。名乗るが遅れたな、私はマルクト。……此奴らからはマスターと呼ばれている」
マスターと呼ばれた男は岩田から離れると、厳重にされている奥の扉の鍵を開けながら、背を向けたまま岩田に話し出す。
「先刻草薙の剣の鞘が光った。ちょうど君がこの世界に来た直後だ。三神そう言っている」
「じゃあ、もう守人達は気づいているんですか?」
川崎の言葉に頷き、扉を開け振り返ると岩田のみ付いて来いといい先に部屋の中に入った。
いきなりこの世界の神様と二人きりになる状況に固唾をのむ。助けを求めようと川崎に振り返るが彼はいつの間にか部屋の外に出ていた。
手を振り、じゃあなと笑った川崎は静かに扉をしめた彼に何も言えなくなってしまう。
ここまで来たら行くしかない、岩田は意を決してマスターの後を追うため扉を覗きこんだ
「地下なのか?」
暗く下へ降りる階段があり岩田は降りていった。やがて階段を全て下りると松明で明かりが灯っており、壁にはなにかの絵や古代字が書いてあった。
遺跡のようだ、と岩田は壁に書かれている絵を見ながら真直ぐな一本道を黙々と歩いていく。
「あれ、この絵……夢と同じ?」
とある壁画に岩田は興味津々と見つめる。絵は子供が描いたようにへたくそだったが、特徴をよくとらえていた
「もしかしてこれ…全てあったこと?」
「そうだ」
気配を感じなかった。突如後ろに立たれ、岩田は驚き、声にならない悲鳴をあげ壁に背をあてた。自分の行動を不審に思ったのか、マスターが自分につかつかと近寄ってくる。暗い場所でより白く見える肌に目を奪われていると、絹のような銀髪が自分の肌に触れる。
最初のコメントを投稿しよう!