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「人…?……念願の人だ!」
こんな所に人が、と思ったがよくよく考えれば自分は今人を探していた。館の鍵はかかっており、入ることもできないのだ
クラスメイトかもしれないし館の中に入るチャンスかもしれないのだ。気付けば小さな後姿を追うため岩田は走り出していた。
だが、バスケで鍛えたはずのスピードはあまり出ず、なかなか追いつくことができなかった。それどころかどんどん距離が離れていってる気がする。
(お、俺こんなに足遅かったっけ…?)
漸く影を捕えたときにはすでに息は上がり、走れずに横に揺れながら歩いていた。そういえば熱があったような気がするとどこか遠くで思いながら丘を登り切った。膝に手を置き、汗をぬぐい、少し離れたところにいた少年に声をかけた
「お、おいあんた!館の人か?それとも俺のクラスメイトか?俺、館に入りたいんだ!」
少年は肩を揺らしゆっくりと振り返った。黒のすこしくせっけな髪に水色の瞳。長袖の少し厚めの黒シャツにぞのジーンズをはいている彼は川崎とは違うオーラを身にまとっていた。
何処か見覚えのある顔立ちに岩田は記憶をたどる。そう、この雰囲気とオーラ、顔立ち。やがて目の前にいる少年を思い出し、呼吸を整える。
となりの席に座っていて、あまり話したことのない彼…名を確か串間と言ったはずだ。
少年も自分の存在を思い出したのか驚いた表情を浮かべて自分を凝視していた
その様子を上から眺めているものがいた。誰であろうこの世界の創造主マルクトである。その後ろには銀色の三つ編みをした少女が鍵の束を持っていた
「お言葉通り、彼、締め出してきたわよ」
「ご苦労だったな、アン。お蔭で…守り人に会うことができそうだ。それも…2人同時に、な」
笑みを浮かべ、天候を見たのち、アンに玄関の鍵だけは開けておくように指示を出す。そしてもう一度岩田と串間に視線を向けたのち、マスターは無言でカーテンを閉めた。
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