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「ゆっくり決めるといいよ! いざとなったら俺たちが守ってあげるから。ねー串間!」
「……男に守られるっていうのも癪だな」
胸を張り、鼻を高くする和田に岩田は礼を言う。そんな岩田をちらりと横目で串間は盗み見をし、ため息をつく。
「お前ら本当に戦うのか?」
「まぁね。決められて帰れない以上、ここに残って戦うしかないもん。それに……帝国には個人的にも恨みがあるから」
話についていけない岩田は一人頭をひねっていると前から人の気配がした。振り返るとそこには長い銀髪の少女と鎧を着た青少年がいた。手には花束を持っている。
「あ…串間、それに和田も……」
「趙雲、それにソウマ!出歩いて大丈夫なの?」
「ああ。気分も少しいいから…」
銀髪の少女、ソウマは串間を見た後和田に微笑む。串間もソウマの視線に気づき、気まずそうに顔をそらした。
「串間、久しぶりだな……調子はどうだ?」
「…………館に帰りたいんだけど。どいてくれる?」
肩を揺らしソウマと呼ばれた銀髪の少女は俯き串間のために道を譲る。
その悲しげな姿に舌打ちをし、串間はソウマを通りすぎ、丘を降りていった
その姿を切なそうに見つめていたソウマは、肩を震わせ持っていた花束を強く握りしめた
「…ソウマっていったっけ? 大丈夫か?」
顔を上げたソウマの目から大粒の涙があふれ出す。それを初対面である岩田に見られてしまい、何とか涙を止めようとするが涙は次から次へとあふれていく。
「お、おい……」
彼女の涙をふくため、無造作にポケットに手を入れるがハンカチは入っていない。ソウマは乱暴に自分の腕で涙をぬぐうと、岩田に花束を押し付け、そのまま館のある方へと帰って行った
「えっと……」
≪≪岩田、その花束さ。墓の前においてあげてよ。ソウマはそれをしに来たと思うからさ≫≫
白虎の言う通り、岩田は墓標の前に花束を手向ける。すると今まで棒のように立っていた趙雲という名の男が自分の隣に膝をつき、小さな墓標を優しくなでた
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