第5話

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   その時、ふいに携帯が鳴った。  あたしの携帯じゃない。  あたしの携帯はバッグに入っているから、バイブレーションの振動は洗面台に響くはずだ。  恐る恐る目を開けると、真田の忌々しげな眉間の皺と、どこの悪人かと思うような鋭い黒目があった。 「真田……電話……」  口唇と口唇が触れてる状態で、そうささやく。  自分の声が熱を帯びているのが判って、恥ずかしい。  真田はチッと舌打ちをすると、あたしの腰を抱いたまま懐の携帯を取り出す。  その液晶を見て、真田は眉をひそめた。 「真田?」 「……いい。こっちが、先」 「え? ちょっと……!」 .
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