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その時、ふいに携帯が鳴った。
あたしの携帯じゃない。
あたしの携帯はバッグに入っているから、バイブレーションの振動は洗面台に響くはずだ。
恐る恐る目を開けると、真田の忌々しげな眉間の皺と、どこの悪人かと思うような鋭い黒目があった。
「真田……電話……」
口唇と口唇が触れてる状態で、そうささやく。
自分の声が熱を帯びているのが判って、恥ずかしい。
真田はチッと舌打ちをすると、あたしの腰を抱いたまま懐の携帯を取り出す。
その液晶を見て、真田は眉をひそめた。
「真田?」
「……いい。こっちが、先」
「え? ちょっと……!」
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