第三章 本当の気持ちと未来の形。

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「あ、零ちゃん」 「はい?」 姫のお母さんに手招きされ零は小走りで向かった。 「しっかりね」 「はい!今度こそがんばります」 ガッツポーズを浮かべ零は笑い雄仁の後を追った。 「次は誰の所に行くの?」 「真冬です」 「真冬ちゃんか」 「もしかして険悪ムードなんですか?」 「ううん。そういうわけじゃないんだけどユウトが居なくなって『やけ食いしてやる』って言って帰ったって英理子から聞いて心配してたの」 「真冬がやけ食い」 地球上の食料が食い尽くされるのも時間の問題ですね。 自然と二人は歩く速度を速め真冬の家に向かった。 真冬の家前。 「それじゃあ、鳴らすよ」 「はい」 インターホンを鳴らし玄関の扉を見た。 「はーい、どなたー?」 扉越しに聞こえた声はいつもの真冬で少し安心した。 「零だよ。少しお話があってきたの」 「おぉ、今開けるね」 扉を開けるとほっぺたにクリームを付けた真冬が出てきた。 見た目に変化は無い。ただ、ついさっきまでケーキを食べてたせいかクリームが付いてる。 「真冬ちゃん、ほっぺにクリーム」 「ん?あ、これさっきのショートケーキのやつだ」 ティッシュを取り出し頬を綺麗に拭いた。 「それで、話しってなーに?家あがる?」 「ううん、大丈夫。えっとね話しって言うのがね」 姫の時と同様に隠れていた雄仁は一歩進み出た。 この瞬間が一番恥ずかしいです。 「あの、も、戻ってきました」 「うん。お帰り」 あれ?リアクション薄い。 「真冬ちゃん驚かないの?」 「へ?これでも死ぬほど驚いてるつもりなんだけど」 「でも、大声を出したり目を見開いたりしないね」 「一度感情をすっ飛ばしてるから中々そういうリアクションは出にくくなったの」 「そうなんだ」 「ね、姉さん。気付いていください。真冬さっきから標準語です」 「あ、言われていれば。いつもの変な所で伸ばすあのしゃべり方じゃない」 「まぁ、それだけ驚いてるって話」 「えっと、とにかく・・・・・・ただいまです」 ペコリと頭を下げ挨拶をした。 「とりあえず飛びつくから」 「へ?」 その言葉の意味をいち早く理解した零はささっと脇に寄った。 「ごー!!」 「飛ぶってそういうこと!!」 胸を目掛けて飛んできた真冬を避けるわけにはいかないのでしっかりと受け止め倒れた。
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