第三章 本当の気持ちと未来の形。

206/215
前へ
/392ページ
次へ
新の家前。 インターホンを鳴らすと新のお母さんが対応してくれた。 「待っててね、今家のバカ連れてくるから」 「バカだなんてそんな僕の大事な親友ですよ」 「ほんと、ありがとうね新城君」 「いいえー」 そんなやり取りを零はジトーっとした目で見ていた。 「な、なんですか?」 「さっきバカで親友って言ってたよね?」 「はい」 「でも新君のお母さんの前じゃあ否定したね」 「はい」 「そう言うの陰湿な陰口って言うんだよ」 「ち、違いますよ。これはひとつの友情の在り方です」 「わかんないなー」 「まぁ、見ててくださいよ」 そんな話をしてると階段を駆け下りる音が聞こえ乱暴に扉が開かれた。 「おいおいおいおいおいおい。こりゃあそっくりさんじゃあねぇな」 「ただいま。ドタキャンして帰って来ちゃった」 恥ずかしがる様子も飾ることもなく自然体で雄仁は言った。 「あはははは、そっかドタキャンか。そりゃあ航空会社が怒るぞ?」 「目の前でチケット破いた時は受付のお姉さん真っ青だったからな」 「チケットまで破くなんてあはははは。そっか・・・・・・帰って来たんだな」 大口を開けて笑ってた新は目尻に涙を浮かべていた。 「バカやろう。男が泣いても格好悪いだけだって師匠に言われてるだろ?」 「うるせぇ。今回のは例外だ、それに師匠だっていつも泣いてんじゃねぇか」 「それもそうか」 「あははははは」 「ほんとばか。新とこうして話していられるなんてな」 「ったく、人のことバカバカ言いやがって」 「お前に許された権利だからな」 「はは、懐かしいな」 新は遠い目で空を見上げた。 「『俺にバカって言っていいのは世界中で家族と雄仁と夕夏だけだ』」 雄仁は思い出すように言った。 「『俺がバカをやってお前達が笑ってくれるなら俺はバカをやり続ける。その変わりお前達はありがとうの変わりにバカって言え』だろ?」 新も雄仁に続き言った。 「あぁ」 「中一の時の約束だったな」 思い出しながら二人は笑い合った。 「男の子の友情ってよくわかんない。だけどね、少しだけ、本当に少しだけわかった気がするよ」 楽しそうに笑う二人を見て零は微笑んだ。
/392ページ

最初のコメントを投稿しよう!

203人が本棚に入れています
本棚に追加