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「そっか。竹先生どこかに行っちゃったんだ」
「元々放浪癖がある人でしたけどまさかこのタイミングで消えるなんて」
「結局わからないことだらけだったね」
「はい」
まだ面と向かってキチンとお礼も言えてないのに。
「大丈夫だよ。竹先生ならその内ひょっこり顔出すって」
「そう・・・・・・ですよね。はい!」
零の笑顔につられて雄仁も頷き笑った。
その後二人は昼食を済ませ残りの友人達の家を訪ねて回った。
「はぁーこれで全員だね」
夕焼けを見ながら公園のベンチに腰に座り一息吐いた。
「お疲れ様です。ココアどうぞ」
「ありがと。あとはもう家に帰るだけだよね?」
「すみません。あと一軒だけ付き合ってください」
「んー?うん」
そう言われて考えて見るが最後の人が誰かはわからなかった。でも、嬉しそうな顔をみると本当はもっと早く伝えたかったんじゃないかと思う。
「師匠、いますか?」
木造の引き戸を何度も叩きながら何度も呼んだ。
「はーい、今開けるよ」
扉が開かれると背の高く細身の男の人が出てきた。
「ただいまです」
雄仁の顔を見ると一瞬驚いた表情を見せたがすぐにいつもの笑顔に戻った。
「おかえり。一回り大きくなって帰ってきたみたいだね」
理由を聞くことなく帰ってきた弟子を笑顔で迎えた。
「師匠、久し振りにやりますけど手、抜かないでくださいよ」
「だけど、キチンと修行をしていない雄仁を殴ってしまって万が一のことがあったら・・・・・・」
「その前にどうして帰ってきてすぐに組み手なの?」
「姉さん。僕、あの行動を説明するのすごく恥ずかしいんです。そもそもこうして師匠の前に立ってるのも恥ずかしいくらいです。だから拳を交えて全てを理解して貰おうと言う甘い考えです」
「普通に口で伝えた方が楽だと思うんだけどな」
男の子はほんと、わからない。
「始めますよ師匠」
「やれやれ。それではお願いします」
師匠が一礼をするとものすごい勢いで殺気が飛んできた。
「男が一度旅立つと決めたくせに引き返すとは、恥を知れ!!」
「っっ!!」
こ、怖い。本能が恐怖を感じて足がすくむ。
「全ては私の教えが足りなかったせいだ。こうなれば死を持って償わせる!!」
「っっ、ちっくしょう!勝手に人の命遣うんじゃねぇよ!」
怒鳴り、先に踏み出したのは雄仁だった。
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