第三章 本当の気持ちと未来の形。

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「それじゃあ僕達はこれで」 「うん。気を付けて帰るんだよ」 「はい」 「師匠さん、ありがとうございます」 「私が未熟だった分は零さんに任せたよ」 「ふふふ、はい!次にお会いするときには子どもの顔を見せられると思いますので楽しみにしててください」 「んなっ!?」 「そうか。子どもかもうそんな年になるんだな」 「しみじみと言わないでください。僕達まだ18歳ですから」 「18歳ってもう大人なんだよ。責任問題なんだよ!」 「師匠、子どもは当分先なのでしばらく待っててください」 「えぇー」 「『待ってろ』ってことはつまり子どもが生まれる予定があるんだね」 「え?あ、それ、それは・・・・・・」 「楽しみにしているよ。それじゃあ」 「はい!また今度」 「あ、師匠!待ってください」 「ほらほら帰るわよ。あーなーた」 零に襟を掴まれずるずると引きずられながら帰宅をした。 家に帰ると英理子が夕食を作っていた。姉さんがその手伝いに入り僕は風呂へと入れられた。 「えーりこ、野菜切れたよ」 「それじゃあ炒めておいて」 「はーい」 英理子の様子が変。顔を合わせた瞬間に感じた姉の勘である。 下手に聞けば言わない可能性があるので放っておいてはみたが一向に話す気配が無い。こっちから聞いてみようかな。 そう考え始めた時だった。 「ねぇ、お姉ちゃん」 「んー?」 「後で大事な話があるんだけど時間ある?」 「あるよ。あ、もしかして好きな人が出来たとか?」 「そういうのじゃない。もっと大事な話」 暗い、まるで絶望を前にしてるかの様な暗さに零は気を引き締めた。 その後の食事はいつも通りだった。 元々食事中は英理子は必要な会話しかしないのでそれがなくてもあまり気にされない。しつこいとなにを言われるかわからないので触れないと言うこともある。 そんな対応にいつもなら寂しさを感じる英理子だが今はそんな余裕無かった。
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