第三章 本当の気持ちと未来の形。

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「ごちそうさま」 「ごちそうさまって英理子。まだ半分以上残ってるじゃないですか」 「食欲無くてね」 「風邪ですか?」 「ううん。少しお昼食べ過ぎただけよ」 「それならいいんですけど」 「鈴、私が残したものだけど食べる?」 「・・・・・・ん」 小さく頷くと英理子のおかずを口に運び始めた。 「ふふ、そこまで綺麗に食べて貰えるとお姉ちゃん嬉しいよ」 「鈴ちゃんの胃袋は真冬さんと張り合いますからね」 「それなのにお姉ちゃんみたいに大きくならないのが不思議よね」 「脳に栄養がいってるんです。見た目じゃなく内側を磨いてるんですよ」 「ユウトは私が見た目ばっかり成長してるって言いたいの?」 「そんなことはありません。姉さんは外側、鈴は内側とバランスが保たれているのです」 「バランスねぇ」 「ん?」 気が付くと英理子は姿を消していた。 「姉さん」 「んー大丈夫。お姉ちゃんに任せて」 妹のことは姉ですか。確かに誰よりも頼りになりますね。 「わかりました」 食事と片づけを済ませ零は英理子の部屋に向かった。 コンコンと二度ノックし返事を待った。 「誰?」 「お姉ちゃんだよ」 「入って」 「お邪魔しまーす」 室内は暗くベッドの上の英理子は月明かりに照らされ、枕を抱きしめていた。 扉を締め床に座った。 「隣に座って」 「今日は随分とお願いするね。まるで子どもに戻ったみたい」 「子ども。うん、あの頃は良かった」 「さてと、話聞かせて貰おうかな」 零は自然体だった。身構えることも崩しすぎることもなく。
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