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「本当はもっと早く話すべきだったのかもしれない。だけど、言えなかった。そもそも、状況がそれどころじゃあ無かったから。でも全部言い訳本当は・・・・・・すぐに伝えるべきだったの」
それ以上の言葉が出てこなかった。
決心したはずなのに、覚悟したはずなのになんて思われるかを考えると声が出ない。
きっと許して貰えない。軽蔑の視線を向けられる。ううん、それで済むなら構わない。もし、ユウトとお姉ちゃんの関係にひびが入ってしまったら?せっかく二人の気持ちがやっと繋がったのにまた離れたら今度こそ戻れない。全部私のせい。
や、やっぱり言えない。言えるわけ無いよ。
なにかに怯える英理子を見て零は無言で手を握った。
「お姉・・・・・・ちゃん?」
「妹の痛みは姉の痛み。怖いのも、痛いのも全部わかるよ」
「でも、全部、なにもかも私のせいだから」
「それでも私は英理子を責めない。だって大事な家族だもん。一緒に乗り越えようよ」
その笑顔に自分を押さえていたなにかが外れた。この人なら、お姉ちゃんなら全部受け止めてくれる気がしたから。
「少しの前の話なんだけどね。お姉ちゃんとすれ違い始めてユウトが家を飛び出した時、私ユウトを河原で見つけて帰りたくないって言うから凜華さんの家に泊めて貰ったの。雨に濡れて、色んな物に絶望してて消えちゃいそうだったの。そんなユウトが見てられなくて私・・・・・・ユウトと・・・・・・その、したの」
顔を上げることが出来なかった。どんな表情をしているかと思うと怖かった。
「・・・・・・え?それだけ?」
「へ?」
あっさりし過ぎた答えに英理子は間の抜けた声を出してしまった。
「そ、それだけ?」
「そのあとも何回か・・・・・・」
「うん。それで?」
「あ、あとは無いけど」
「はぁーなんだぁーてっきり『私のお腹の中には新たな命が』っとかなんとか言い出すかと思ったのに」
「ばっ、ばか!そんなわけないでしょ!!」
あまりに恥ずかしいことを言うのでつい顔があがり面と向かって怒ってしまった。
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