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「ふふ、やっと顔見せてくれた」
「あ・・・・・・」
「そのことに関しては私の方がありがとうだよ。ユウトのこと心配して守ってくれたんでしょ?」
「ち、違うの。私は結局自分の想いに負けてつけ込む形で」
「でも、おかげでユウトは立ち直って私のことを考えてくれたんだよ。人間自分のことで一杯一杯になってたら他人を気遣う余裕なんて無いからね」
「でもっ!「英理子は怒って欲しいの?許して欲しいの?」
零の視線は鋭く自分を見失っている英理子には直視することが出来ず目を逸らした。
「それは・・・・・・わからない」
「だったら許されておきなさい。お姉ちゃんもありがとうって言ってるんだから。ね?」
「っっ、またどうしてそこで笑うのよ」
「え?」
「一番欲しい時にそうやって笑うから、私が、っっ、泣くのよ」
「それじゃあお姉ちゃんは安心して泣けるように抱き締めてあげないとね」
零は微笑み抱き締めると英理子は胸の中で大泣きをした。
「お休みなさい英理子」
泣き疲れ子どものような無邪気な笑みで眠る英理子に小さく声を掛け部屋を後にした。
部屋の扉を閉め壁に背を預け自分の体を抱いた。
「そっか。こんなに、こんなにも痛いんだ」
私が魔莉ちゃんの所に行くって言う度に雄仁はこんな痛みを感じていたのかな。
雄仁の部屋。
姉さん、今日は来ないんですかね。
ひとりで眠るベッドに寂しさを覚えていた。
「ユウトいる?」
「はい!」
喜びからかいつもより声が大きくなってしまったのは言うまでも無い。
「入るよ」
「どうぞ」
扉を開けるとパジャマ姿の零が部屋に入ってきた。
「いつもならノックもしないで中に入ってくるのに珍しいですね」
「英理子とのことで少し感傷的になってね」
「英理子は大丈夫ですか?」
「うん。もう、泣き疲れて子どもみたいにグッスリ」
「あの英理子がですか」
想像出来ないな。
「あの子もあの子なりに色々考えてるのね」
「迷惑掛けちゃってますからね」
「横になっていい?」
「はい」
雄仁の返事を聞く前から零はベッドに倒れ込むように横になった。
「電気消しますね」
「エッチなことしちゃダメだからね」
「その言葉そっくりそのまま投げ返します」
「本当にダメなの?」
「え、えっと・・・・・・」
「ふふ、嘘。ごめんね困らせちゃって」
「いつものことです」
零の頭を撫で雄仁も横になった。
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