入江の憂鬱

3/4
前へ
/83ページ
次へ
早く、彼女に名前で呼んでもらいたい。 九一さん、と。 そして、彼女を名前で呼んでみたい。 瑞希、と。 「九一、一緒に飲もうぜ!」 突然、部屋に晋作が乱入する。 「おっ、瑞希もいたのか!ちょうどいい、酌してくれよっ。」 そう言って、彼女の肩を抱き、腰を寄せる。 「離れてください、晋作さんっ!」 「嫌よ、嫌よも、好きのうち、だよな?」 ・・・・・急に、牛の血が見たくなった。 「うぎゃあぁぁぁぁぁぁ!」 さて、邪魔者はいなくなった。 すっきりして部屋に戻ると、彼女は机にもたれて眠っていた。 そっと、その肌に触れようと、手を近づける。 彼女の少し乱れた髪を直し、肌に触れようと、指を伸ばしたその時。 「遅いから迎えに来たんだけど?」 稔麿が入ってきた。
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

85人が本棚に入れています
本棚に追加