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疲れているようだから、今日はここで寝かせよう。
のどまで出かかったその言葉を必死に飲み込み、口を閉ざす。
寝かせて、どうしようというのだ。
一晩中彼女を抱きしめ、その柔肌に触れ、匂いに酔いしれて、朝が来ないことを祈り続ける。
あぁ、そんなことを望む私は、狂っているのだろうか?
そのような浅ましい考えを、稔麿に悟られないよう、視線を逸らす。
彼女は、稔麿の腕に抱かれながら、部屋を去っていった。
・・・・・今夜も眠れそうにない。
縁側に出ると、鉄が足元に寄ってきた。
触れられないなら、せめて近くで見守ろう。
彼女が悲しいときに胸を貸し、嬉しいときには共に笑おう。
彼女が私の腕の中に、少しでも留まるように。
ちりん。
懐の中で輝く猫の、鈴音が鳴った。
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