疑惑

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その日、稔麿は、久しぶりに旅籠に向かった。 出迎えた女将には、僕が来ていることを内密にしてもらって、影から彼女の仕事ぶりを伺う。 文に書かれていたような、お粗末な仕事ぶりは、どこにも見られない。 以前かけていた眼鏡も外し、結い上げた髪は別人のよう。 パタパタと、忙しく動き回る彼女の姿と、それを目で追いかける男たちの姿が視界に入る。 どさくさに紛れて、彼女のお尻に触った男がいた。 平手打ちか?なんて、どこかで期待したけど。 彼女は、笑って、やんわりと、その手を押しのけた。 にやけて笑う男。 更に伸びてくる手を、するりとかわし、再び笑って、その場を去っていく。 そのかわし方が鮮やかで、目を見張った。 あの動きは、くのいちに似てる? ・・・まだ、わからない。 そうして、再び観察を続ける。
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