彼女は知らない。

吉田稔麿

奇兵隊所属。

玄瑞に誘われたから入ったけど、特に肩書きはないね。

小さい頃から、家の使いであちこち行ってたから、江戸暮らしが長い。

刀も槍も扱うけど、槍のほうが得意かな。

晋作には負けないよ？

あぁ、彼女の前では、栄太郎って呼んでくれる？

名前がわかると困るから。

何でって？

彼女が未来から来たというのが本当なら、僕の未来も知っているかもしれない。

でもね、知りたくないんだ。

未来なんて、自分で作り上げていくものでしょ？

それに、屯所内で変なうわさが流れてる。

彼女が、夜毎、そして日替わりで幹部の部屋に行き、閨をともにしている、って。

誰がそんな下種なうわさをながしたのか知らないけど、万が一にも彼女の耳に入ってほしくない。