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「お前は、どうして死んだんだ・・・?」
答えを返すこともない、冷たい身体を見つめる。
今は、夏だ。
すぐに埋葬しなければ、腐ってしまう。
瑞希に会わせるべきか否か。
しばし九一は逡巡する。
死んだと伝えるだけでは、彼女は納得しないかもしれない。
やはり、どんな形であれ、別れは必要、か。
そして、重い腰を上げた。
「みゃう。」
部屋を出ると、すぐに鉄が足にまとわり付いてきた。
「すまない、少し急ぐんだ。」
九一は、鉄の頭を撫でる。
その時、鉄の首に、何かついているのに気づいた。
「鉄?」
九一はしゃがみこみ、その正体を確かめる。
忘れもしない、かつて彼女に贈ったはずの髪紐。
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