吉田稔麿

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おかしいよね? 同室にいる僕だって、せいぜい彼女を抱きしめるくらいのことしかしていないのに。 真実を親切に教えてあげる気は、全くないけど。 あと、ね。 僕のことを、「吉田様」って呼ぶ女は、掃いて捨てるほどいるけれど、「栄太郎さん」って呼ぶ女は、彼女一人だけ。 それって、特別だと思わない? 彼女の髪を結うのも結構好き。 さらさらと流れる黒い髪が、僕の指からこぼれ落ちていくの。 その間だけは、彼女はじっとして僕の前にいるんだ。 懐かない猫が、ちょっと懐いた感じに似てるかな? 髪を結い終わって、彼女のうなじに顔を埋めると、なんだか顔が緩むんだよね。 最近は忙しくて、あまり彼女と一緒にいられない。 彼女が足りない。 ・・・・・どうしてだろうね?
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