2人が本棚に入れています
本棚に追加
第1章 智と琴音とそして恵
「琴音は、恋人……親友……」
智はいつものように、バスにゆられながら彼女のことを考えていた。
そしていつもとおなじ答えになる。
「どちらともいえないな、まだ」
桜 琴音(さくら ことね)26才
今は独身。3才の女の子のママ。
仲間 智(なかま さとる)26才
一人住まいの独身男。
智が、バス停から歩いて職場へむかっていると「ドン」と背中に衝撃を感じた。
ふり返るとママチャリに乗った女の子が笑顔で智にあいさつした。
「仲間ぁ! おはよ」
秋元 恵(あきもと めぐみ)22才
智の職場のアルバイト、短い髪がよく似合う女の子。
どういうわけか毎朝、智を待ち伏せするかのように現れチャリごと衝突してくる。
「仲間って呼び捨てにするな! 仲間さんでしょ、普通」
「いいじゃない仲間で、わるい?」
恵は、智と二人の時平気で呼びすてにする。
どうやら彼女なりの親愛の表現のようだが、智にはあまり通じていないようだ。
仕事中は、智だけでなくみんなに敬語で接する、誰にでも親切なのだが……。
その日の昼休みのこと。
最初のコメントを投稿しよう!