第1章 智と琴音とそして恵

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第1章 智と琴音とそして恵

「琴音は、恋人……親友……」 智はいつものように、バスにゆられながら彼女のことを考えていた。 そしていつもとおなじ答えになる。 「どちらともいえないな、まだ」 桜 琴音(さくら ことね)26才 今は独身。3才の女の子のママ。 仲間 智(なかま さとる)26才 一人住まいの独身男。 智が、バス停から歩いて職場へむかっていると「ドン」と背中に衝撃を感じた。 ふり返るとママチャリに乗った女の子が笑顔で智にあいさつした。 「仲間ぁ! おはよ」 秋元 恵(あきもと めぐみ)22才 智の職場のアルバイト、短い髪がよく似合う女の子。 どういうわけか毎朝、智を待ち伏せするかのように現れチャリごと衝突してくる。 「仲間って呼び捨てにするな! 仲間さんでしょ、普通」 「いいじゃない仲間で、わるい?」 恵は、智と二人の時平気で呼びすてにする。 どうやら彼女なりの親愛の表現のようだが、智にはあまり通じていないようだ。 仕事中は、智だけでなくみんなに敬語で接する、誰にでも親切なのだが……。 その日の昼休みのこと。
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