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「仕事が終わり、赤ワインを飲みながら琴音さんの料理の出来上がりを待つ、贅沢な時間だな」
「なに言ってるの、ワインバーで赤ワインを飲む、当たり前じゃない」
「そうだけど、なんて言うかなぁ」
「ふふ、なにも言わなくていいんじゃない」
目の前に、ホカホカの美味しいパスタが現れた。
琴音が得意で、智が大好きなペンネアラビアータだ。
「お、うまそうな匂いだな」
年配の男が、ドアを開けて入ってくるなりよく通る声で言った。
「福知さん、こんばんは」
福知 年男(ふくち としお)43才
この男も現在独身、背が高くてがっしりしている。
智とはこの店の常連さんとして顔見知りだ。
「智くん、そのアラビアータが晩ごはん?」
「ええ、もう腹ペコで」
「あ、気にしないで食べてよ」
いわれるまでも無く、智はよく食べ赤ワインもよく飲んだ。
そんな智を、カウンターの奥で琴音は微笑みながら見ていたが、福知に呼ばれてワインのボトルを取り出した。
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