第1章 智と琴音とそして恵

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「仕事が終わり、赤ワインを飲みながら琴音さんの料理の出来上がりを待つ、贅沢な時間だな」 「なに言ってるの、ワインバーで赤ワインを飲む、当たり前じゃない」 「そうだけど、なんて言うかなぁ」 「ふふ、なにも言わなくていいんじゃない」 目の前に、ホカホカの美味しいパスタが現れた。 琴音が得意で、智が大好きなペンネアラビアータだ。 「お、うまそうな匂いだな」 年配の男が、ドアを開けて入ってくるなりよく通る声で言った。 「福知さん、こんばんは」 福知 年男(ふくち としお)43才 この男も現在独身、背が高くてがっしりしている。 智とはこの店の常連さんとして顔見知りだ。 「智くん、そのアラビアータが晩ごはん?」 「ええ、もう腹ペコで」 「あ、気にしないで食べてよ」 いわれるまでも無く、智はよく食べ赤ワインもよく飲んだ。 そんな智を、カウンターの奥で琴音は微笑みながら見ていたが、福知に呼ばれてワインのボトルを取り出した。
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