第1章 智と琴音とそして恵

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「福知さんも、なにか作りましょうか?」 「お腹は減ってないんだ。チョコレートをだして、カカオ100%のやつ」 福地は、イタリア産の赤ワインとカカオ100%のチョコが大好きなのだ。 智は昼休みでの、恵のことを思い出していた。 「福知さん、カカオ88%のチョコはどう思います?」 「うーん、コンビニでも売ってるし、普通に美味しいと思うよ。でもオレにはこのくせのある100%のこいつが一番だな」 カカオ100%のイタリア産チョコで上機嫌で酔っ払う福知。 琴音は洗い物をしながら智にこっそり話しかけた。 「ねえ、あとで逢えない…」 「逢いたい」 「お店閉めたらメールするし…、戻ってきて」 智は、がばっと勢いよく椅子から立ち上がった。 「うまかったなぁ、ごちそうさま。福知さん、お先です」 「お、もう帰るの? おれと琴音さんを2人だけにして心配じゃないの」 赤い顔で笑いながら、福知は智の背中に声をかけた。 「夜はまだ少し冷えるかな」 エレベーターを降りた智は、独り言を言いながら歩いて自分の部屋に帰ってきた。 琴音が智の部屋に来ればいいようなものだが、彼女はけっしてそうしようとはしなかった。 時間があるので、シャワーを浴び、着替えてコーヒーを飲んでいた。
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