第1章 智と琴音とそして恵

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花束を受け取った智、広がる香りを胸の中一杯に吸い込みながら言った。 「恵さん、君こそこんな遅くに花束抱いてどうしたの?」 「わたし? フラワーアレンジメントを習ってんの」 「それで花束、でもこんな遅くまで……」 「今日は特別、とっても大事な人と逢ってたの……ふふ、気になるの、仲間!」 「それよか、この花束、どうしたらいい」 「仲間にあげる、そのかわり飲みにつれてって」 「大事な人と逢ってたんだろ、このまま帰ったらどう」 「仲間ぁ! 妬いてるのか、カワイイ」 智はとてもとても困ってしまった。琴音が待っているし、このまま恵を置いて行くと明日からうるさいからだ。 「お、智くん。デート中か」 顔を真っ赤にしたご機嫌な福知が、二人のそばに立っていた。 「福知さん!」 「かわいい彼女さんだね、紹介してよ」 「恵です、いつもおせわになっております」 恵が、やけにていねいに福知にお辞儀をした。
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