リモネン

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その肌は熱伝導して 真昼の月は白く 滲んで霞がかった そんな錯覚に溺れる 薄皮一枚の下に 君を生かす液が流れている 君が生きている音がする 「愛してる」のその時に 哀を感じるのは 行き着く先なんて左廻り どこでもなくって、 薬指の単環が 二重結合を望んだ夜に その躯をきつく抱いた 甘ったるい酸に 落ちてしまうような そんな幻覚が混ざって 薄皮一枚で繋がった関係でも 名前が欲しくて 君と生きている音に聴く 愛を、愛をしていると 形を求めては 巡った体液が漏れ出すから どうか、証を遺すために 重なる単環を 外れた鎖から侵蝕して 形のないものを、形にしたいと 君が、生きている音に 君を、生かしている液に 君を、形作る細胞に 名前を与えて 愛を、愛をしているんだ その壁一枚なんて 溶かしてしまえば 行き場もなくなって、 後悔なんて単純だ アイを、しているんだ。今、 それは2人を溶かすのだろう この壁一枚なんて 哀しむ程の無呼吸だ まだ、終わりはしないのだから
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