207人が本棚に入れています
本棚に追加
沖田さんは屯所の玄関であろう場所へと入り、草履を無造作に脱ぎ捨てた。私も慌てて靴を脱ぎ手に持った。
さすがに置いといたら色々と面倒なことになりそうだし。
そのまま長い廊下を歩いていく沖田さん。所詮、私は後ろしか見えない。だから、どこへ行こうとしているのかがさっぱりと分かりません。
すると、いきなり止まった沖田さん。思わず落ちそうになり、反射的に沖田さんの背中の着物を握ってしまった。
その瞬間、すごい音で沖田さんが障子を開けた。
「…おい、ふざけてんじゃねぇぞ、総司いいいいい!!!」
「嗚呼、土方さん。失礼します」
「なあに普通に入ってきてんだ馬鹿やろおおおおお!!!!」
「うるさいですよ。おチビちゃんがびっくりしてるじゃないですか」
「…は?」
沖田さんにストン、と降ろされて土方さんの正面にくるように後ろから肩を抑えられた。
どうすることもなく、土方さんにニヘリと笑った。
「…おい、こいつぁ誰だ」
「森の中で見つけました。念のため、連れてきた方が良いのがなって」
「…たく、面倒ごとを増やして…」
うなだれる土方歳三さん。ご心中、お察し致します。それでも、さすが鬼の副長。立ち直るのが早いったらありゃしない。
「おい、総司。いつもの野郎どもを集めやがれ」
「はーい」
もちろん、総司が行ってしまえば、必然的に土方さんと二人だけになってしまう。どうしようか迷って仕方なく、また下手な笑顔を作るのだった。
不思議なことに、土方さんに髪がグシャグシャになるまで撫でられたのは気のせいだと思いたい。
最初のコメントを投稿しよう!