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「なんか問題でもあんのかぁ?」
「人の記憶覗く時点で問題だらけだろ」
「たしかになぁ」
悪びれもしない男に呆れつつも、その行為について責める気はヴィクに無かった。自分の記憶は大したものではない。
今まで殺してきた人々のこと、今はもう亡き家族のこと、自分の生の原動力となっているもの。どれを見られようと何も支障はないものばかりだ。
それに、自分はもう長くは生きられない。
「こりゃ、お前がこんなになんのも納得だなぁ」
「……で、満足したのか?」
「満足、なぁ……。してないって言ったら、どーすんだ?」
男はにやにやしながらヴィクを見下ろす。その目はヴィクがどう返してくるのか、と楽しんでいるようにも見える。
「俺に出来ることは無い。勝手にすればいい」
「出来ることならたくさんあるだろ?その体使えば、なぁ」
「……馬鹿か」
含まれた言葉の意味を悟ると、男を見るヴィクの目が冷めたものになる。
男は何をするでもなくそんなヴィクを見つめた。にやけ顔は相変わらず崩さないまま。
「で、あんたはいつになったらここから出て行くんだ」
「あ?あー、俺が飽きるまで?」
「そろそろ見回りが来るぞ。禁忌魔法使ってんだ、侵入者だと気付かれててもおかしくない」
あまりの男のマイペースさにヴィクはため息を吐く。
幸せ逃げるぞ、と笑いながらため息の原因が言ってくるが言葉を返すことを諦めた。彼には何を言っても無駄だ。
そんな諦めの雰囲気を察したのか、男は笑みを消してヴィクの頭上に腰かけた。
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