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苦笑しながら、親父の手前に腰を下ろした。炬燵だから、隣にいるような感じだ。
母ちゃんがぱたぱたとトレイを手にやってきて、向かいにでも座るのかと思えば親父と俺の茶とコーヒーだけ置いた。
「ごめんなさい、ちょっとご近所の佐山さんのところ、行って来なくちゃ。忘れてた」
「あん?」
「町内会の打ち合わせ」
「なんだ、それ」
俺が眉尻を下げると、母ちゃんは「すぐ帰ってくるから」と慌ただしく出て行った。
……親父とふたりだけかよ。
そう思いながらも、何となく頭の中にあったことを思い返すと、好都合かな……なんて思えてくる。
親父は浅く溜め息をついて、面倒そうに雑誌を閉じた。
「……あの調子じゃ、1時間は戻ってこない」
「へ? そうなの」
「佐山さんは母さんのお気に入りだからな。トシはあっちの方が10も下だというのに、馬が合うらしい」
「はは。母ちゃんがちょっと子どもっぽいから、ちょうどいいんじゃないの」
「かも知れん」
神妙な面持ちで言う親父の様子がなんかおかしくて、思わず小さく吹き出してしまった。
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